河童、室戸岬をこえる。

2003年4月15日

高知県香美郡夜須町

 やばいやばい。10日から更新してなかった。というにも理由があって、徳島県の蒲生崎から室戸岬の間というのは、地元の人曰く「過疎中の過疎」というぐらいで、電波なんかさっぱり通じない。やっと今日、高知まで20キロというところまできて、H”がつかるようになったという次第だな。

 え〜と、それでこれまでの経過ですが、11日は宍喰というところまで漕いだんだな。午後から雨という予報で、いつ降り出すかと思って何とか宍喰に入って、造船所のスロープに引き上げたとたんに雨が降り出して、雨の中フネを片づけているうちに造船場の中で宴会の準備が整っていて、そのまま宴会に入った。それでもって、酔っぱらって、その後温泉に連れて行ってもらって風呂場でダウンして、しばらく寝ていた。ちなみに、この日は一晩中雨が降り続き、結局造船場の中にテントをはらせてもらって寝た。
 12日は、午前中雨が残って停滞。またしても、造船所の社長と地元の人と喫茶店に行ってモーニングを食べ、さらにコーヒーをおかわりして午前中を過ごす。ようするに、みんな雨で仕事にならんのだ。
 午後、雨が止んだので、ようやく動けるようになったんだが、前日の飲み過ぎと、温泉でひっくり返っていたのがきいたのか、気持ちが悪くて結局何もできず。翌日のために午後は寝ていた。


 13日は、いよいよ室戸越えの準備のため、三津という室戸岬のすぐ手前の港まで漕いだ。なぜかかわうそ号が異常に遅く、初めのうちは「これでもドドヶ崎をこえた男だぜ」とかいって漕いでいたが、昼頃になって「いや、大間崎だってこえたオレさ」、出港から10時間ほど過ぎたあたりでは「竜飛では、引っぱってもらった河童だしなぁ…」と、だんだんトーンダウンしていった。ようやく11時間漕いで三津に入港。スロープの上にテントをはった。ところが、くたびれて寝ているときに限って夜半に風が強くなるもので、この夜も12時過ぎからブンブン。はじめは無視していたんだが、またしてもテントが浮き出したので、しかたなく起きてテントを移動させた。あらかじめ、重い荷物は運び出しておいたんだが、まさかたたんで移動させるわけもなく、フレームをつかんで強引に運ぶんだが、またしても底に穴を開けてしまった。

 それで14日の朝まで(といっても4時起床)寝ていた。起きてみると、風が全然落ちていない。ここから、少し南西に進み、室戸岬をくるっと回って北西に進むコースを取る予定なのだが、北東の風が強くて、いくら追い風とはいえ、少し危なそうな感じであった。これはいかんと、少し様子を見ることにした。再度6時まで待って、様子を見てみると、風は少し落ちてきた。よっしゃ、行くぜ、とばかりに準備してフネを出した。三津から室戸岬までは磯がずっと続いていて、岸は派手に波が白くなっていた。あんなもんに捕まったらかなわんな〜と思いながら進んで行くのだが、風は北東から6〜7メートル、波は2メートルときおり3メートルほどのが混じるという海況である。かわうそ号のほぼ限界といったところで、ヒヤヒヤしながら漕ぎ進んでいった。
 ところが、うわさに聞き及んでいた岬の先端を、たっぷり離してかわしていくと、なんと岬の西側は真っ平らではないか。室戸岬から、岩礁がずっとのびているのだが、そこに線を引いたように、西側にはまったくなみがない。かわうそ号も、一番先の岩をこえたところで、ウソのようにおとなしくなってしまった。なんだこれは。岬の東側は、大波が岩にあたって真っ白になっているのに、そのほんの50メートル西側では、直径3メートルもないような岩の上で、磯釣りをしている人までいる。信じられないような光景である。
 しかし、河童とかわうそ号は、室戸岬をかわしてしまったので、もう後は知らない。さっさと、今日の港へ進むだけである。本当に、べたべたになってしまった海を、せっせと漕いで安芸郡奈半利町の加領郷という港に入った。前日に、高知の自作仲間、天狗さんから連絡をもらって、ここにはいるといいことがあるといわれていたからだ。実際、入ってフネをかたづけていると、天狗さんのヨット仲間、坂本さんがお見えになって、そのままご自宅でご飯だのビールだの風呂だのとおよばれしてしまい、とってもいいことがあったのである。坂本さん、ありがとうございました。
 それで、さっぱりして港に帰ってきて、やたらと広いスロープの上に放置されていた軽のワンボックスの中にマットを敷いて寝た。テントをはってもよかったんだが、なんとなくめんどくさかったので、またしても固い壁で寝たのだ。

 そして今日、15日の朝を迎えたのだが、朝4時少し前、パタパタ音がするので、目を覚ますと、雨が降り始めていた。あわてて、干してあった服を取り込んだ。すぐ止むかと思ったら、意外に降り続いて、明るくなってきてもまだ降っている。風はまったくないので、出すつもりでいたのだが、これはうっとおしい。結局、車の中で漕ぎ服に着替えて、さらにポンチョをかぶり、雨の中、出港準備を整えた。テントをはっていたら、テントの撤収だけでかなりの仕事になっていたはずだ。すこし、体を曲げないと横になれなかったが、車の中で寝て正解だった。

 それで、今日も8時出港、3時半入港の7時間半走漕で、夜須町のヨットハーバーのスロープにかわうそ号を引き上げた。ここの隣には、ヤッシーパークという公園があって、さっきのぞきにいったら、売店で半額セールが始まって、思わず夕食と明日の朝食を買い込んでしまった。四国はいいことが続く。

 明日はいよいよ高知に入る予定である。出発以来の都会なので、明後日は1日停滞して、市内観光に回る予定である。それに、サンダルと防水スプレーを買いにいかなければ。それに、使っていたシャワーラジオがこわれてしまい、漕いでいるあいだ、静かすぎるので、ラジオも買い込まないと。漕いでるあいだ静かだと、やたら時間が長いんだよ。これこそ予備が必要だ。

宍喰にて。
北岡造船の社長、お世話になりました。
室戸岬東側。
海がわかる人なら怖い写真。
ちなみに、かわうそ号の上から撮っている。
岬をかわしたところ。
この岩の向こうは大荒れ。
室戸岬をバックに撮ろうとしたが、いまいち
うまくいかなかった。
昨夜の寝場所。
雨も風もきにならず、なかなかいい所だった。