河童はグルメではない。というより、グルメになれる素質はまったくない。なぜかというと、基本的に貧乏だからである。
いまは懐かしきバブルの時代、日本には何をトチ狂ったのかグルメブームなどという怪しげな物が蔓延し、あちこちで「まったり」とした食べ物があふれていたようだが、それから十数年、いまだ「まったり」の意味がわからないままいるのである。
そもそも、一般のサラリーマンもどきがグルメなどと称するのがおかしいのであって、いやしくともグルメなどというのであれば、お抱えの調理人の2〜3人お家にいてもらわないと困る。日本の税制で、はたして何人グルメがいるのか、調べてもらいたいものである。
さて、 そしてナゾの食べ物第2弾である。今回紹介する食べ物は、恐らく普通の家庭では絶対口に入らない物である。というよりも、いったいこれを食べた人間が何人いるのだろうか。まずは、見てもらいたい。
これ、である。
皿のとなりに転がっているのは、おもちゃの怪獣のシッポであるから、ナゾではない。ナゾは皿の中の白いモノである。塩だけで味付けがしてあって、塩加減は実にビールにぴったり合うようになっていた。食べた感触は、ホルモンをもう少しかみやすくした感じである。
ちなみに、これを頂いたのは、岩手県船越の漁師の所である。かなり強い追い風の中、釜石を超えて、一気に40キロ突っ走ったあと、風呂とビールとこれ(だけじゃなくて、さしみやらなんやらたくさんあった)を頂いて、河童はすっかりとけてしまった。
で、これがなにかというと、これ、マンボウのモツなんだそうだ。マンボウといえば、あの面妖な形をした魚である。マンボウは、ときどき定置網にかかるそうで、そうすると市場にでることもなく漁師が自分たちで食べるのだそうだ。ちなみに河童は、以前やはり船越で、マンボウの刺身というのも食べたことがあるが、これもなかなかにけったいな感触であった。見た目はコンニャクの刺身のような感じなのだが、食べた感触はナタデココだった。味はというと、これもやっぱりナタデココに近い感じだった。
いずれにせよ、マンボウは市場には出ないそうなので、こればっかりはいくらグルメの人でも口にすることはないと思う。しかし、このマンボウのモツ煮込みは本当にうまかった。できればもう一度食べてみたいものの一つである。