キャンプの話(その1)

2002年10月31日

 ひとまず航海は停滞状態に入ったものの、ホームページの更新は続ける。とはいえ、航海中と違って、そう書くこともないし、これからは週2回ぐらいのペースで更新していく方針である。内容は航海中の話から河童の近況まで、これまでと同じくごちゃ混ぜエッセイでいくつもりだ。

 さて、それで今回からしばらくキャンプの話をしようと思う。キャンプのノウハウなどと言うつもりはないが、一応100泊以上もキャンプで過ごしてきたので、それなりに経験はしてきた。何か役に立つことがあると思うので、あれこれ書いてみたい。
 さて、河童のキャンプの特徴は、なんといっても発電機とパソコンがあることなので、初回はやはりこのあたりから書いていきたい。

 いうまでもなく、かわうそ号は発電機を積んでいった。これについては、アホかいな、という人が少なからずいた。当然だと思う。河童が調べた範囲で、過去に発電機を積んだカヤックはない。そんなものつめるわけがない、というのが常識である。しかし、河童のやりたい旅のスタイルを考えると、どうしても電気が必要になる。コンセントをどこかで借りるというのも方法だが、必ず借りられるというものでもないし、フネというものは基本的に自己完結するものだという考えで、発電機を持っていくことにした。
 持っていったのは、ホンダのEU9iという発電機である。装備重量15キロ弱、最大出力900Wインバーター付というものである。大きさは450ミリ×240ミリ×380ミリ。この発電機を見つけた時、これなら持っていけると思った。ちょっとしたカバンぐらいの大きさである。これを前のハッチに積んだ。高さが380ミリと、少し入りきらないので、その部分だけはハッチを切り、別付けでカバーを作った。いくらハッチの防水が完璧でも、裸のままハッチに入れるのは怖いので、これにビニール袋を二重にかけ、さらに大きなトートバックに入れてある。
 4サイクルのため、燃料は普通のガソリンでよく、5リットルの携帯タンクを持っては燃料を買いにいった。発電機自体のタンク容量は2リットルちょっとで、満タンにしてエコスロットルという燃料節約モードにしておくと、6時間ぐらい回っていた。

 この発電機に関しては、まったくすばらしいとしかいいようがない。なにしろどんな状況であろうと一発でかかるのだ。スターターなどはついていないので、エンジンをかけるには、横についているひもを引っぱってかけるのだが、ともかく一度引っぱれば必ずエンジンがかかった。
 まあ、こういう事を書くとメーカーに悪いのだが、河童も船外機やら消毒用ポンプ、はては肥料まき機まで、エンジンにはけっこう痛い目にあっている。ともかく、かからないのである。ことに、このひもを引っぱるタイプのエンジンに限ってかからないのだ。4サイクルであろうが、2サイクルであろうが同じである。チョークを引こうが、プラグをみがこうが、どうにもかからなくて、何度エンジンをけとばしたことか。それぐらい、小型のエンジンというのはかからないものだと思っていた。

 ところが、この発電機は河童の持っていたイメージをあっさりくつがえしてしまった。いつでもどこでも、クイッとひもを引っぱるだけで一発でかかる。たまにかからない時があるので、おかしいと調べると、河童がエンジンスイッチを入れ忘れているという始末だ。最近では、だんだん仕組みがわかってきて、圧力がかかるまでゆっくり引っぱって、力を入れるのはホンの50センチだけ。それでも回り出すのだから、本当にあきれるぐらい優秀なのだ。ホンダのエンジンを使ったのは、実はこれが初めてだったのだが、ホンダのエンジンって、こんなにかかりのいいものなのかと感心した。

 この発電機を使い出して、もう一つ驚いたことがある。静かなのだ。よく夜店などの近くで回っているような発電機のイメージとはまったく違うので驚いた。
 ご存じの通り、今年の東北は雨が多く、キャンプも雨に閉じこめられることが多かった。当然、テントの中でじっとしているのだが、この時、テントの前にフライをかけて、その中で発電機を回していた。発電機の横、1メートルのところでパソコンをたたいていたのだ。それでも、うるさくてしかたがないというような印象がない。晴れた時に、いろいろ実験してみたのだが、テントから10メートル離すと、テントの中でかけっぱなしになっているラジオの方が大きくなり、15メートル離すと、ラジオを切っても音がわからなかった。町の中ではなく、夜になると誰もいなくなる港でもこんなものだ。
 これは航海の初めの頃の話であるが、海上サポートを頼んだヨットの発電機が故障していて、かわうそ号からこの発電機を持っていってヨットの上で回していた。コクピットの上で回す発電機の音はキャビンの中にはまったく届かず、キャビンの中ではオーナーがテレビで時代劇を見ていた。われわれは、電気炊飯器を使って炊いたお米で、ご飯を食べたのである。

 電気は、主にパソコンと携帯、電池の充電に使った。潮でいかれてしまった一台目のパソコンは、バッテリーが死んでいたために、発電機を回さないと使えなかった。携帯電話は、命の綱とも言えるものなので、毎日こまめに充電して使っていた。最近は電池が少しへたり気味で、1日充電をさぼると、翌日の午後ぐらいから3本ある表示が2本に下がるようになってきた。リチウムイオン電池の寿命はだいたい500回ぐらいなので、もう寿命に近いということだろう。
 電池は、ライトからGPSまで、すべて単3型のニッケル水素に統一した。しかし、この電池がくせ者で、容量が微妙に違う。というのは、ニッケル水素電池の進歩というのはすさまじく、この旅の準備をしている間から、どんどん容量が増えていった。今は2000mAhまで出ているようだが、河童の持っているのは1550mAh〜1900mAhのものが20本ほどある。デジカメやライトが4本仕様なので、基本的に同じものを4本買ってくるのだが、水没させたりして、いくつかの電池は2本ずつしか残っていなかったりする。4本あるものでも、使用状態によって充電にかかる時間が違ったりして、これには少々困った。急速充電器を2台持っていたが、このうちの1台は、使用状態の同じ4本でしかうまく充電できないタイプの充電器で、使用状態がバラバラの電池はうまく充電できなかった。どれか1本の電圧が上がると充電をやめてしまうので、他の電池がうまく充電されないままになってしまうのだ。このおかげで、18時間は保つはずのGPSが数時間で落ちてしまうことが何度かあった。こういう時に限って荒れていたり、潮の速いところをこいでいたりする。今度行く時は、充電器をもう少し持っていこうと思う。余裕があれば、電池も種類を統一しておきたいところだ。
 これらの電池は、必ず電池ボックスに入れて持ち運んだ。ボックスに矢印を書いておいて、使用前のものは上向き、使用後のものは下向きと、きちんとわけてしまっておいた。こうしておかないと、どれがどれだかわからなくなって、またしても肝心な時にGPSが落ちるのである。

 もはや長期のキャンプには、電源は必需品であると思う。おそらく何年か後には、発電機じゃなくて、燃料電池を持っていくことになるんだろうなと思うが、それまでにはまだしばらく時間がかかりそうなので、当分はこの発電機が活躍しそうである。

 それにしても、一発でかかるエンジンはいい。

充電中。
砂浜で使う時は、下に板を敷いた。
燃料タンクは途中で買い入れた。
ポリタンクではガソリンを売ってくれない。
雨の日は、よくこういう使い方をした。
これでもさほどうるさくない。
テントの重しとしても有能なのである。