津軽半島反省の日々(?)

2002年10月19日

青森県西津軽郡深浦町田野沢

 やっと鰺ヶ沢を出たものの、またしても強い西風に行く手を阻まれてしまい、深浦町田野沢という港に逃げ込んだ。鰺ヶ沢から13キロ。4時間の行程であった。それでもって今日は北風と波が強くてまたしても停滞で、いったいいつになったら青森県が終わるのか、さっぱり予想がつかない。

 なかなか進めないせいもあるが、津軽半島と言うところは何かしら人生をふり返らせるところで、河童も吹きすさぶ風の中、いろいろと考えさせられてしまっている。反省しない人生、いや河童生を送るべく、何となく生きてきたのだが、揺れるテントの中でできることもなく瞑想にふけっていると、あれやこれや過ぎ去りし日々の記憶がよみがえってきて暗くなる。これはいかん。反省なんぞしたところで、しかたないのだ。運命などというものは、人の努力をいとも簡単に押し流し、すべてを奪い去っていくものなのだ。同時に、時としてとんでもない報酬を与えてくれたりもするのだが、それがいつになるのかはだれにもわからないものなのだ。だから、過去をふり返ったところで嘆いたところで、去っていった恋人が戻ってくるわけでもなく、そんな時間があるのなら、河童は未来と南に向けて進むべきなのだ。「11人いる」だって、「未来へ!」で終わっているではないか。
 あ、いや戻ってきてくれる分には、いつでも歓迎いたします、ハイ。

 さて、こうして人生を反省せずもふり返りつつ、昨夜(18日夜)はテントの中で寝ていたら、また漁師に誘われて飲みに呼ばれてしまった。恵比寿丸という船の船長のところへ行って、地元の人5,6人とテーブルを囲んだのだが、みごとに言葉がわからない。なんだかこの光景は経験したことがある。昔、アメリカに遊びに行っていた頃、パーティーに誘われたときを思い出した。この時は、まだ英語の耳ができていなく、どこで言葉が切れているのかさえもわからなかった。本場の津軽弁も、この時の英語と同じで、音節の切れ目がまったくわからない。音節もわからなければ単語もわからず、文脈もわからないまま、とりあえず注がれるままにビールを飲んで帰ってきた。い〜や、いい飲み会だった。

 それで、これを書いている今は19日の朝なのだけれど、またしても昨夜一緒に飲んでいた民宿兼食堂経営の田中さんが、朝ご飯を食べるぞと迎えに来てくれて、深浦町千畳敷の田中食堂で朝ご飯をごちそうになっているのだ。田中さんは、名古屋の今池のお店で修行を積んだということで、吹上に住んでいた河童と、名古屋ローカルな話で盛り上がっている。青森に来て、まさか今池の話をするとは思ってなかったが、やはり地元の話をするのは楽しいものなのである。河童は、じょじょに啄木に近づきつつある。

 ところで、この辺りはしばらくH”が使えない。写真は撮っているのだけれど、H”が通じるところまでしばらく写真のアップは待ってね。更新もこの19日分のページにつなげていくので、トップがかわってなくてものぞいてみて。いずれにしても、いつここを越えられるかわからないのだ。

あとちょっとだったのに〜!

2002年10月20日

青森県西津軽郡岩崎村

 あと少しだったのだ。もう少しで青森県を越せるところだったのだ。秋田県の県境まであと7キロと言うところまで来て、突如南東の風が強くなり、やむなく3キロほど戻って、小さな港に逃げ込んだ。日没ぎりぎりで港にはいると、前線は通り過ぎたようで風が止んでいた。はあ。

 今日は4時に起きて、手早く準備をして6時半に深浦を出た。波がかなりあって、少し危ない気もしたが、今日でないと来年の春までここにいなけりゃならなくなるといって、強引に出てきたのだ。案の定、港を出るときにくずれた横波を食らってびしょぬれになりながら出発した。その後、ずっと2メートルほどの波の中をこいで、昼過ぎに黄金崎という岬をかわすとやっと波が静まった。ここから本格的日本海で、後は何も考えずに南に行くだけでいい。はじめの予定では、この岬をかわしたあたりの港に入る予定だったのだが、やはりこげるときにこがないとという考えが浮かび、18キロ先の須郷岬を目指すことにした。この時の海況は波もなく、風も吹いていなかった。ついでに潮も見てみたが、まったく流れてなかった。だから行けると思ったのだ。

 ところが、残り7キロと言うところになって、突如南東の風が吹き出した。わずか5分で、南に向かってこげなくなってしまった。しばらくこいでみたが、日没までの時間を考えると、逃げるしかなかった。岬をかわした後、さらに5キロこがないと港に入れない。ここで向かい風に捕まっていると、進むのにも逃げるのにも困ることになる。そこで、GPSをセットし直して逃げようとしたのだが、陸から吹いているので、セットした港に向かえない。仕方なく、さらに北の、つまり戻る方向の港を目指してこいでいった。何とか日没直前に港に入ったものの、この港はまだ工事中らしく、電気もついていない。近くの民家に行って水を分けてもらい、テントをはったが、あたりは真っ暗である。

 天気予報は、明日も明後日も天気が悪く、明後日なんか波が5メートルとかで、またしばらく動けない。ここがどんなところなのか、まだよくわからないが、感じからすると、まったく、本当に、きれいに何もないような気がする。ここで最低2日停滞かあ。
 前線の吹き出しが3時間遅かったら、秋田県到達って書いていたと思うと、さすがにくやしいのである。あ〜あ。