弁天湯の謎

2002年10月2日

青森県下北郡大畑町

 台風はものすごい勢いで河童の真上を通っていったようだ。朝4時半頃雨が止み、猛烈な南風が吹き出した。さいわい、河童とかわうそ号に被害はなかったものの、先日揚げに行った定置網には、川から流れ出した流木が大量にひっかかり、相当な被害を受けたようだ。今日も一日、川は濁流となって流れており、海岸は恐山から流れてきた流木で埋め尽くされてしまった。

 大畑でコインランドリーを探したのだが、さすがに大畑にそんなものはないらしい。その代わり、コインランドリー完備と書いてある銭湯を見つけたので、夕方そこへ行ってみた。看板に偽りはなく、小型の洗濯機と乾燥機がおいてあった。すぐさま持ってきた洗濯物と、着ていた服をすべてそこに放り込み、洗濯機を回したのだが、風呂から上がってくると、当然着るものがない。乾燥機で乾かすまで30分、裸でうろうろしていて、風邪を引きそうだった。いくら洗濯をしたかったとはいえ、もう少し考えてすればよかった。

 風呂屋で思い出すのは、八戸の鮫にあった「弁天湯」である。鮫漁港から、坂を少し上っていったところにある、いわゆる古い銭湯なのだが、何しろ雰囲気が怪しい。まず、入り口に男湯、女湯と書いてある引き戸があって、ああ入り口から別れているんだなと思って、引き戸を開けると、中は三角形のホール(というにはあまりに小さいが)になっていて、さらに男湯、女湯の扉がある。はじめの扉はただのイミテーションなのだ。そこを入っていくと、今度は、まあ昭和30年代の風呂屋の風景が広がっていて、番台には陶磁器の人形に魂だけ吹き込んだような女性が座っている。そこで、入浴料350円也を支払い、いよいよロッカーを開けようかと思うと、陶磁器から注意されるのだ。ロッカーは、常連が自分たちの風呂道具を入れているらしく、ビジターはロッカーでなくかごを使わないといけないのだ。
 かごに、どさどさと荷物を入れ、ようやく風呂に入れるのだが、この風呂がまた熱い。しかも、こういう不気味な風呂屋に限って、常連らしい客がとぎれることなく来ているので、うかつに水を出してうすめるわけにもいかない。体と頭を洗ってさっさと逃げ出したが、なんとも不思議な風呂屋であった。そう思うのは、旅人の河童だけかと思っていたのだが、あとで地元の人に話をしたら、うーん、あそこはねぇなどといっていたので、どうも個人的な感想とも言えないらしい。
 ちなみに、八戸にはなぜか風呂屋がたくさんあって、こうした不気味な風呂から、近代的な風呂まで各種そろっている。その後、二度と弁天湯に行かなかったのは言うまでもないが、気になる人はぜひ訪ねてもらいたい風呂屋である。

 大畑の山奥には薬研の湯というところがあって、河童の湯というのがあるらしい。いってみたいのはもちろんなのだが、バスが1日1便しかない。しかも、たった5分止まって、そのまま帰ってくるのだ。さすがにここには行けそうにない。心残りではあるのだが。

今朝のかわうそ号。
手前から向こうに、すごい風が吹いている。
津軽海峡は、まだまだこんな様子。
竜飛は遠い…。