津軽海峡秋景色。

2002年9月30日

青森県大畑町

 やっと津軽海峡にたどり着いたのに、天候がよくない。台風も近づいてきているようだし、少し心配している。

 さて昨日は、大間からヒラメを釣りにきている佐々木さんという漁師に誘われて、フネに朝食を食べに行った。大間から2トン半の小さなフネであちこちに出かけていき、ヒラメを捕っているのだそうだ。アブラメという魚を醤油だけで煮てくれたのだが、どうしたら醤油だけでこういう味になるのか不思議なぐらいすばらしい味で、さすがに津軽海峡の魚はうまいと納得した。ヒラメを釣る道具なども見せてもらい、この辺りの漁業のことや、暮らしのこと。冬のことなどを聞いた。やはり、今度は寒い時期に下北を訪ねてみる必要がありそうである。
 
 そして今朝、テントで朝ご飯を食べていると、ここですっかりお世話になっている佐藤さんがやってきて、定置網を上げに行かないかという。行きます行きますと、長靴とカッパを借りて、すぐ漁船に飛び乗った。港からほどなく定置網につき、網をあげるのを見学した。これまで、何十枚も定置網の上を通り過ぎてはきたが、網をあげるのを見るのは初めてである。もちろん、仕組みも何もわからないので、手伝うなんてことができるわけがない。じゃまにならないよう、おとなしくカメラマンに徹していた。
 休みの日が2日あったとかで、網をあげるのは3日ぶりだそうだ。ブリッジの横に立って見ていると、フネは網をめがけて突進していく。えっ?と思っていると、後ろでガラガラと音がして、スクリューと舵を上に上げている。フネはそのまま惰性でロープの上を乗り越え、網の真ん中で止まった。すぐに小さないかりのようなものを投げ込んでロープをつかまえ、ウインチにかけて引っぱり出した。だんだんと網をしぼっていくと、最後に獲物が集まっていた。大きなサケが銀色の体を光らせてはねている。そこへ直径が1メートルほどもあるタモを差し込んで、クレーンを使い魚を引っぱり上げる。巨大なタモからデッキに落ちたサケは、びちびちとはねながら船倉へ入っていった。

 3つほど網を上げ終わると、フネは市場に魚をおろしに向かった。この日の漁はサケ600匹ほど。オス、メスを分けるためにならべられるのだが、さすがにこれだけのサケが並ぶと壮観である。鼻と尾びれの形で、オスメスを見分けるのだそうだが、ときどきおかまっぽいのが混ざっているそうで、そいうものは腹をさすって見分けるのだそうである。
 網にはサケの他にも、ヒラメやハモなどが入っていた。小アジはエサ用として売れるらしいのだが、めちゃくちゃに安くて、商売になるようなものではないそうだ。いきおい、網にかかった小アジも、適当にすくったあとは海に捨てられることになるわけで、それをねらったウミネコとカラスが、わんさかフネに群がっていた。こいつらが捨てられた小アジを拾っていくのは、ちっともかまわないのであるが、困ったことに鳥というのはところかまわずフンをするので、たとえ雨が降っていなくても、カッパのフードはかぶっておいた方が賢明である。河童は、かわうそ号でウミネコ爆撃隊におそわれたことがあって、この時はミッドウェー海戦よろしく、右に左に舵を切り、敵機の爆撃を避けたのであるが、いかんせん機動力に欠き、被弾1。かろうじて浸水はまぬがれたものの、甚大な被害を被ったのである。
 まあ、今回はそういったこともなく、無事港に帰ってこれたのは、八戸にある蕪島神社のご加護によるものであろう。 

 そんなふうに楽しく大畑町滞在は過ぎているのであるが、台風も来ているし、本当にいつここを出られるのか見当がつかない。天気図をにらみならがら、困っているのである。ま、とりあえず、今日は下風呂温泉にでも行ってこようかなあ。

大畑でのキャンプ地。
雨が降ると水がたまる。
荷物を運ぶのをめんどくさがった
河童が悪いのだ。
大間のさすらいヒラメ漁師、佐々木さん。
ヒラメを求めて旅暮らしをしているのだ。
佐々木さんの後ろにある白い箱がキャビン。
河童のテントより快適そうだった。
大畑ですっかりお世話になっている佐藤さん。
元教師で、ここで塾を開いている。
なんだが、毎晩この人のところで飲んでいるような
気がするが、たぶん気のせいだと思う。
網をあげる。
順番にたぐっていって、魚を追いつめるように
なっているらしい。
はじめは何をしているのかわからなかった。
巨大タモで、サケを船倉に移す。
もちろん人間の力で上がるようなものではなく、
クレーンを使って持ち上げる。
かすかに北海道が見える。
雲行きは、ずっとこんなふう。
北の果てなのだ。
昨日見つけた看板。
河童として、どうコメントすべきか…。