三陸海岸難航中

2002年9月13日

岩手県田野畑村島越

 いや、更新が滞ってしまって申し訳ない。なんだよ〜、購読料払ったのに書いてねーじゃねーか、という方もいると思いますが、こっちも苦労しておりまして。やっとなんとか書ける状態になりました。

 この4日間にあったことを手短に話しますと(きちんと話すと大変に長くなってしまうのだ)、まず10日、船越を出たものの、いきなり逆潮と逆風にやられて、まったく進めず、なさけないことにすぐとなりの山田湾に入ってしまった。この山田湾の奥まで行けば、携帯もPHSも通じるのだけれど、山田湾は奥が深くて奥まで6キロもある。そこで、なんとか入り口付近で止めようと、入り口の近くにある港に入ってみたのだけれど、うねりが直接入り込んでいて、とてもスロープが使えるような状態ではない。もう一つの港に入ってみたものの、ここも同じ。日没直前に、3つ目の港に入り込んで、たまたま港に来ていた漁師に手伝ってもらってフネを引き上げて、一夜を過ごした。ここは水道がなく、沢水をすくってきて使った。人家はあったものの、山の谷間で携帯も使えなかった。

 11日は、なんとか田老までたどり着いた。もっとも、入港は5時になってしまい、入港してすぐ日が暮れた。2日続けて9時間以上もこいだことになって、指が痛くて仕方なかった。田老は携帯は通じたものの、買い物に行ったわけでもなく、何にも見ずに通り過ぎてしまった。朝、出かける時に堤防の上からおいでおいでをする人がいたので、何かくれるのかと思って近づいてみると(ちなみにときどき釣り船がおいでおいでして近づいていって缶コーヒーをもらったりしている)田老のお巡りさんで、いろいろ聞かれてしまった。親御さんも知ってるの?とか言われたけど、30代も半ばにして、親も何もないと思うんだけどねえ。ネット見てくれるって言ってたけど、見てくれているかなあ? 見てたら、書き込みしてくださいね。

 そして12日。前線が通ることはわかっていたのだけれど、2時間も待っていれば通り過ぎるだろうと思って出ていった。10時過ぎに、案の定北が吹き出して来たので、近くに見えた港に逃げ込んで風が止むのを待っていた。ところが、2時間待っても風が落ちない。この港にはスロープがなくて、フネが引き上げられない。1時まで待って、ついにあきらめた。ロープを出して、あれこれ工夫して、なんとかかわうそ号を停泊させたものの、浮いた状態でハッチを開けるのはかなり困難で、食料が入っている前のハッチは意地で開けたものの、テントが入っている後ろのハッチはついに開けられなかった。しかたなく、いつもデッキの上に置いてある防水袋に入れてある、人がかろうじて入れるだけの簡易テントをはって寝たものの、夜半過ぎから雨が降り出した。簡易テントでは雨がしのげず、いつもテントの下に敷いているシートを持ってきて、簡易テントの上にかけて、何とか過ごした。もっとも、テントはもとより、寝袋もびしょぬれになってしまった。
 ここは、人家もなく、携帯も通じず、残り少なくなってきた食料の補給もできず、すごいところだった。また機会があれば紹介するけど、よくもまあこんな所に防波堤だけあるもんだと思うような所だった。ちなみに、田老町水沢というところなので、興味のある人は地図でも見て欲しい。

 それで今日、13日である。ずっと逆潮で、そろそろいいかげんにして欲しいと思っていたのだが、今日もしっかり逆潮だった。時速2キロ台で、じりじり北上し、田野畑村島越というところへたどり着いた。3時に入ってきたのだが、上がってすぐ、公園の水道で頭と体を洗い、フネの片づけは後回しにして、食堂を探しに行った。実は昨日から食料が切れて、ろくに飯を食べていない。昨日は、もらったアワビを6個食べたものの、かんじんの米が後部ハッチに入れてあったために、小さなカップ麺ひとつしか食べていなかった。今朝は、差し入れてもらったおにぎりを二つ食べたものの、昼はもちろんなにもなく、 さすがに限界である。駅まで行くと、喫茶店があったので、迷わず入ってカツ丼を食べた。その後、郵便局へ行って葉書を出し(宮守村で書いたのだが、ポストがなくて投函できずにいたのだ)、ラーメンを買い込んで帰ってきた。濡れたものを乾かそうと思ったが、すぐに日が暮れてしまった。6時ですっかり暗くなってしまったので、行動時間が限られてきた。朝も4時半に起きるのだが、まだ日が出ず、真っ暗の中荷物を片づけている。今も、ライトを使いながらこれを書いている。発電機を持ってきてつくづくよかったと思うのはこういう時で、テントの中で10Wの蛍光灯がこうこうと灯って、手元が明るい。もちろん、充電が終わるまでの間なのだが、気分的にも明るいのは助かる。

 さて、明日も北風が予想されているのだが、はたしてどこまで行くか。ここから8キロ断崖絶壁が続いて、当然潮がきついのだ。平均時速2キロとして4時間。指が保つかどうか。ここを過ぎてしまうと、三陸海岸も終わりに近づいて、あとはそれほどきつくもなさそうなんだけどね。さらに、ここを過ぎるとPHSが通じるのだ。ともかくリアス式海岸は、携帯も通じないところが多いので、更新ができない可能性は高い。更新がなくても、心配しないように。海上保安庁はあいかわらずしっかり見守っていてくれるようで、宮古海上保安署からも電話があった。大船渡の沖でシーカヤックが浮いてたらしいけど、誰か沈んだのか? 船体放棄した人がいたら、保安庁に連絡を入れて欲しい。飛行機飛ばしたり、巡視艇が出たり、大捜索をしているらしいよ。かわうそ号は順調だけど。