この国の行くへ(森の生活編)

2002年9月5日

岩手県下閉伊郡宮守村

 なんだか森の生活が続いているのだが、今日は森林伐採の実体をレポートしたい。このあたりの山にも、杉の木はたくさん植えられているのだが、杉の木は安いし、売れないのでほとんど放置されているのは、どこも同じことである。そのかわり、このあたりで切られているのは広葉樹で、まあものの見事に切られている。切った広葉樹を何に使うかというと、椎茸栽培の原木にするのだそうだ。

 実は森林伐採の実体をわざわざ見に行ったわけではなくて、冬の間、ストーブで燃やす薪を拾いに行ったのだ。あまり知られていないが、薪の値段というのは灯油よりずっと高く、薪ストーブを一冬使おうとすると、ずいぶんな出費になってしまう。そこで、その薪を拾いに行こうと山に入ったのだが、まるほどひどいことになっていた。
 森林伐採をするには、まず木を運び出すための道路を山に作っていく。作っていくというとなんだか創造的な雰囲気がするが、実体は山を削り、沢を埋めていく作業である。ブルドーザーを山の中に入れ、ガシガシと斜面を削っていくのだ。水の流れている沢などは、そのまま埋めると雨が降った時に鉄砲水の原因になるので、石を入れて埋めていく。こうして、トラックが入っていける道を作り、あとは道路のまわりの木を切り倒していくのである。
 当然、残るのは土と石が露出した山肌だけである。あとで木を植えるつもりなのかどうかまでは知らないが、現状では雨が降れば土砂が川に流れ込むのは確実である。ちなみに、このあたりの川は岩手県の海には流れず、北上川に流れ込んで宮城県まで行ってしまう。岩手県にとっては痛くもかゆくもないのである。そういえば北上川の河口を通った時、妙に水がにごったいたのだ。上流の様子を見て、納得がいったのである。こういうことはここだけではなく、北上川の流域で広く行われているに違いない。
 しかし、この広葉樹の伐採も、お金になるものではないらしい。向かいの山も伐採が行われているのだが、山の中腹まで山を切って、数十万なのだそうだ。その金と引き替えに失われていくものは、もちろん広葉樹だけではない。

 この国のゆくへはますますわからなくなっていく。

 

伐採のあと。
こうして道を作りながら奥へ入っていく。
崩された山肌はそのまま。
雨が降るたびに削られ、土が流れていく。
北上川の河口付近。
川の水と海の水の境目が見える。
妙ににごっていると思った。