おいしい停滞

2002年8月29日

宮城県本吉郡唐桑町

 台風の影響が出てきて波が高く、今日も停滞してしまった。陸の人は信じられないかもしれないが、天気図に台風が現れる頃には、海ではすでに波が高くなっているのである。

 そこで、とある所を訪ねて、いろいろお話をうかがってきたのであるが、困ったことにこれらがほとんど書けないのである。もちろん写真などとんでもなく、河童はここに入るために、ゲートにいるガードマンにボディーチェックを受け、荷物をすべて預けたぐらいなのだ。
 というのも、とあるものを養殖しているところへ行ったのだが、栽培技術に関しては、、外交機密か防衛機密と同じぐらいのトップシークレットなのである。もちろんいろいろと話を聞かせてもらってはきたが、河童のくちばしはダイヤモンドと同じ硬度を誇っており、すでに固く閉じてしまって開かないのである。これを開くためには、おいしいお酒か食べ物が必要なのであるが、食べ物に関しても、今日ばかりはすばらしいものをいただいてしまって、しばらくは開きそうにないのである。

 なにをいただいてきたかというと、アワビである。アワビといっても、そんじょそこらのアワビではなく、エゾアワビという、生食がもっともおいしいとされるアワビを、まさに取れたてでいただいた。
 天然物が一番だと思っている諸君は、考えをあらためてもらわなくてはならない。養殖物でも、きちんと管理され、栽培されているものの味は、天然物をしのぐ。今日のアワビは、まさにその証明のようなもので、出されたアワビを一口口に入れて、河童のいままでのアワビ体験はすべて偽りのものであったことがわかってしまったのである。
 普通、アワビというものは磯臭いものである。実は河童は、あの磯臭さが苦手で、これまでアワビといっても、特においしいと言うほどおいしいと思えなかった。アワビなぞ、値段こそ高いものの、磯臭く、歯ごたえだけのものだと思っていたのである。ところが、この養殖アワビには、まったく磯臭さがない。純粋にアワビの香りとアワビの味なのである。その味たるや、これがアワビだったのか!と、河童を開眼させるものであった。アワビはこういう食い物だったのだ! 
 その後で、なにゆえにこの養殖物のアワビが純粋たるアワビの味と香りを保っているのか、その秘密はどこにあるのかという話を聞いたのであるが、もちろんそのことは書けない。それどころか、本来であれば、このすばらしいアワビを世に広め、世間にアワビがなんたるかを知らしめるのが、ジャーナリストとしての河童の使命であると思うのだが、なにしろオフレコを前提に話をおうかがいしたので、このアワビがどこのものであるかは、ここには書けないのである。実におしいことである。

 このほかにも、ホヤとホタテをいただいたのだが、あまりおいしそうな話を一度に書くと、うらやましがられるので、この二つの話は、また後日書くことにする。一言だけ書いておくと、まあ、ようするに本物というのは、こういう味がするのだな、ということである。ホヤもホタテも、水から揚げたものを、10分もしないうちに口にしたのだ。それがどんなものだったかは、また後日の楽しみなのである。