気仙沼湾には大島という、本当に大きな島があって、その島が湾をまっぷたつに分けている。というより、気仙沼湾の大部分をこの大島がしめていて、海面はこの島のまわりにくっついているといったほうが正しい。気仙沼の町は、島の西側にくっついた海面の一番奥にあって、港や水産加工工場や駅などがある。
普通に考えれば、気仙沼に入っていく船は、大島の西を通って、まっすぐ港に向かうと思うであろうが、おどろいたことに漁船の多くが、わざわざ島の東側を通り、暗礁と養殖イカダの散らばる曲がりくねった航路を抜け気仙沼に入港している。西側を通れば、まっすぐに航路もあるし、便利だと思うのだが、遠回りになるせいなのか、漁船は東側から出入りするのである。夜間、ここへ入港してくる船は、航路をあらわしている指向灯という、光の筋を頼りに、強力なサーチライトで海面を照らし、養殖のイカダとブイを探りながら入ってくる。
当然、中にはドジな船もあるわけで、昨夜は一隻、養殖のイカダにつっこんだらしく、もがいている船を見かけた。これは自分がやると大変なのであるが、他人がひっかかっているのを見ている分にはたいへん楽しい光景なのである。双眼鏡を持って高みの見物を決め込んだのは言うまでもない。
さて、そして今朝、気仙沼湾東側にはガスがかかっていた。どうしようか迷ったのだが、岬の先までは夢也さんに曳航してもらえると言うことで(岬の先端まで6キロある)とりあえず出てみた。ところが、岬の先端に近づくにつれガスは濃くなっていき、ボートに引っぱられる河童には何も見えない。しかも、先に進むにつれてうねりが高くなってきた。岬の先端の港に入って様子を見ようかと思ったのだが、この港がまた役立たずの港で、南側の防波堤でくずれたうねりで、入り口の半分が白くなっている。しかも、入り口北側には岩礁が、また真っ白になっているではないか。とてもではないが、かわうそ号で入っていけるような状況ではない。
結局、戻ることにして、とことこと引っぱられて、またしても湾の一番奥に帰ってきた。うーん、またしても湾から出られなくなってしまった。
はたしていつ気仙沼湾を出られるのか。冬が来る前にはなんとか…。
出発するとき。 天気はいいが、前の方が真っ白。 |
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帰る時。 うねりとガスでな〜んにも見えない。 動力船は逃げる余裕があるので、 けっこう岩礁に近づいても平気だが、 こっちは逃げる余裕がないので怖いのだ。 まあ、河童が臆病なせいもあるけど。 |
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夢也さんのスパロー。 10数年たっていると言うけど、とてもきれい。 はやり、はじめの工作が大切と言うことやね。 |