真水が恋しい

2002年8月22日

宮城県志津川町

 今日は予想していたよりも風が落ちた。しかし、うねりの方向がかわったのか、湾内にうねりが入り込んで、湾内の岩礁では波が白くなっていた。ここへ来てから始めてみる光景だった。

 しかし、今日はそれどころではなかったのである。実は昨日、風呂に入ろうと思って湯をわかしたのだが、なぜか風呂釜が動かなくなってしまっていたのだ。動かなくなったまま逃げるわけにもいかず、何とか直さないといけない。断っておくが、河童は機械には多少くわしい。範囲は草刈り機の2サイクルエンジンからジェットエンジンまである。風呂釜はさわったことがないが、河童の想像ではナベ以上ガスタービン以下だと思ったので、さわってみることにした。
 そもそも、どうして風呂釜がぐずりだしたのかというと、燃料が切れたからである。佐々木小屋の風呂釜は、灯油が燃料なのだが、まさか河童がいる間に燃料が切れるとは思わなかったので、見もせずに使っていた。ところが、昨日2日ぶりに水を入れて、タイマーをセットしておいたところ、なぜか湯がわかなかった。タイマーはちゃんと戻っているのに、湯が沸いてない。もしや、と思い燃料タンクを調べてみると空っぽであった。そこで、タンクに灯油を入れたのであったが、それでも動かないのである。電源を入れ直してみても、ぴくりとも動かない。普通、機械というのは電源を切って入れ直すと、リセットがかかって動くようになるのである。結局、昨日はここで時間切れで風呂に入れなかった。

 そして今日である。朝起きて、もしかしたら風呂釜に自己治癒能力があって、自然に動くようになっているかもしれないと期待してタイマーを動かしてみたのだが、どうやら風呂釜には治癒能力がないらしい。
 どうしたものかと思って、少し考えた。そういえば、北茨城の大津でお世話になった山形さんが、こういった風呂釜やら給湯器の設備屋さんだった。早速電話してみたのだが、運悪くでない。こうなったら、1人で開けるしかないのだが、風呂釜のどこを見ても開けるようなところがない。普通の機械であれば、メンテナンス用の扉なりなんなりがついているのだが、どこをどうみても開けるところがないのだ。ということは、パネルをどこかはずすようになっているはず。しばらくながめていて、不自然に傾いているネジを2つ見つけた。これか、と思いネジをはずしてみると、案の定、機械部分が出てきた。想像したとおり、タンク→燃料フィルター→電磁ポンプ→燃焼室という構造になっていた。まず疑うのは燃料フィルターである。フネのエンジンでも同じなのだが、タンクからエアーを吸うと、燃料フィルターに空気がたまって燃料ポンプが動かなくなる。少し前のディーゼルエンジンで燃料切れをやると、この空気を抜くエアー抜きという作業は欠かせないものであった。見ると、この燃料フィルターの上にも、エアー抜きらしいネジがついていた。ゆるめると、泡が少し出て、ついで灯油が出てきた。これでエアー抜き完了である。
 ところが、タイマーを入れてみたところ、また動かない。そんなバカなと、再度よく見ると、中に入っている回路の基板上に、なにやら怪しげなプッシュスイッチがついている。こんな開けもしないと触れないようなところについているスイッチというのは、緊急停止スイッチかリセットスイッチのどちらかである。どっちなんだよ、お前はよ、となじりつつ、このスイッチを押してみた。そしてタイマーを入れると、かすかな音を立てて風呂釜は動き出した。やれやれ、問題解決である。
 このあと、すぐに山形さんから電話がかかってきた。やはりリセットスイッチを押さないと動き出さないらしい。とりあえず風呂をわかし、入ってみたのは言うまでもない。もちろん動作確認のためである。

 そんなわけで、午前中、風呂釜をなおしていたのである。午後は明日のために小屋を片づけていた。2週間近くいると、あれやこれや引っぱり出しているので大変なのだ。3時頃になってようやく港に行くと、子供が泳いでいた。そういえば、今年はまだ泳いでいない。もうすぐ遠野だし、河童淵で一浴びしよう。