夜と霧の隅で

2002年7月28日

福島県いわき市四倉港滞在中

 天気予報があてにならない。昨日、今日と大はずれで、今頃南東の風が吹くらしいが、実際吹いているのは北の風である。朝の3時にすでに吹いていて、日が上がれば風も強くなることは予想できたので、さっさと停滞を決め込んだ。はたして10時を過ぎる頃から、びゅんびゅんに吹き始めた。さすがに、天気のカンは良くなった。

 昨日は「今日もダメだっぺ」という漁師の言葉を振り切って出てきた。潜りの漁は、海水が濁っているために中止になったが、波もそれほどなく、朝は風も霧もなく、今日を逃すとまた延びると思って、小名浜港を出発したのだ。
 ところが、美空ひばりの歌で有名らしい(オレはそういう世代でないから詳しいことは知らない。地元の人がそういっていたからそうなのだろう)塩屋崎を越えた辺りで、またしても霧に捕まり真っ白。前回、茨城での反省にもとづいて、レーダー反射板をつけてきたので、たぶんレーダーに映っているだろうと、勝手に期待して漕ぎ続けた。そして、1時間ほどして霧がはれたと思ったら、今度は真向かいからの風が吹き出した。あいかわらず向かい風には弱くて、GPSで見ると3キロ出ていない。その中、4時間漕いでなんとか四倉港に入ろうとしたのだが、この四倉港がまたすごかった。
 四倉港は、海岸の東側にできている港で、入り口が南側と北側にある。この南側の入り口が、砂で埋まって使い物にならないという噂は小名浜で聞いていた。しかし、向かい風が強くてとても北口まで漕げそうもないし、どうせ30センチもあればいいのだからと思って、南口から入っていったのだ。ところが、防波堤に囲まれた水路を漕いでいくと、後ろから波が来て、おおっと思っているとかわうそ号の前で崩れて白波になった。港の中で、巻き波が立っている…。
 バカな! 船が何に弱いといって、後ろからの崩れ波に一番弱い。九十九里での沈も、これが原因なのだ。いやしくとも防波堤に囲まれた港の中で波が巻くとは、一体どういう事だ! しかし、怒ったところで波は確実に押し寄せていて、かわうそ号をもてあそんでいく。波が追い越していくたび、荷物を満載したかわうそ号はふらふらと左右に揺れ、失速してコントロールを失うのだ。もう少しで防波堤の陰に入れるところで、最後の大波が来た。かわうそ号に座った河童の、ちょうど目の高さの波が崩れながら襲いかかってきた。柄沢さんに作ってもらった特大ラダーをフルに切って、目一杯片漕ぎし、なんとか沈を免れたものの、コクピットの中は水が大量に入って、たぷたぷゆれている。とたんにフネの動きが悪くなるが、そのまま必死に漕いでなんとか防波堤の陰に入った。
 やっと落ち着いて見ると、港の半分が見事に砂で埋まっている。河童が入ってきた入り口も、わざわざ浮標が入れてあって、航路が作ってある。よく見ると、浅いところの色が変わっているではないか。大変なところに入ってきてしまったことを実感した。ポンプのスイッチを入れ、水を出しながら港の北に行き、スロープにフネを引き上げた。強風の中、ひさびさに漕いだので腰が痛くてたまらなかった。

 実はこのスロープの目の前に、健康ランドがあって、入泉料2000円プラス深夜料金1000円で泊まれる。近くのコンビニで15%割引の券を見つけたので、2500円ほどで温泉入り放題、空調の利いた仮眠室で暖かい毛布とベット使い放題で朝までいられる。
 もちろんテントを張ったが、なかなかに心の揺れる夜であった。

塩屋崎。
これを越えるまでは海は静かだった。
なのに真っ白になっちゃうんだもんな〜。
当然だが、向かい風の中、必死に漕いでいる時に
写真なぞ撮れない。
これは、自転車まで組み立てて、夕食を食べたあとに
ようやく撮る気になった一枚。
これが港の中の風景か?
港作るだけじゃなくて、整備しろよ。
税金の無駄遣いの典型例だよ。
訴えてやる!
この建物が健康ランドだ。
とうとう5リットルのガソリンタンクを買った。
これまでは、1リットルのポリ容器2つで買いにいって
いたんだが、売ってくれない店が多かった。もちろん
消防法に違反するからだ。
でも、発電機には2.3リットルしか入らないし、こんな
タンクでガソリン持ち歩く方が危険な気がする。
ちなみに河童は、危険物取扱者の免状を持っている。
ついにテントが破れた。
しかも、パッチを当てにくい部分が…。
ぬうしかないなあ。
四倉の町。
銀行の建物だけが、奇妙に新しい。