三重県南島町古和浦湾さらくわ〜蒲郡
オリンピック、やってますなあ。いやいや、国を代表してというのは大変なもんだと思いながら見ているけど、あれを見ていると、ナショナリズムはなくならないと、つくづく思うね。負けたら、まさに「戦犯」だもんなあ。楽しむスポーツもあるけど、競うスポーツもある。競う側の頂点がオリンピックなわけで、当然、金も動くし、名誉とか、名声とか、いろいろなものがくっついていくわけだ。やってる人たちは大変だわ。
というわけで、河童の話に戻ります。どこまで書いたのか、すっかり本人も忘れていて、いま調べてみたら、蒲郡までどころか、伊良湖岬までもたどり着いていない。今回は、伊良湖岬まで書く予定です。
鳥羽のすぐ南、的矢湾で腹を空かしたまま寝たのだが、当然、翌朝は早くに目が覚めた。目が覚めた、と言うよりは、腹が減って寝られなかったというのが正しい。そして、死ぬほど暑かった。3時ぐらいに目が覚め、あと30分は体を休めておこうと思ったが、寝ているだけで汗だくになってきた。これはかえって体力を使うと思い、思いなおして、真っ暗な中、テントをたたみ出した。これまでと違って荷物が少ないので、テントの撤収も簡単である。
明るくなるのを待って出発した。目的地は伊良湖岬。距離的には26キロほどなんだが、ここには伊良湖水道というややこしいところがある。伊勢湾、三河湾という二つの湾の入口で、潮がめちゃくちゃに流れるのだ。ついでに、本船航路になっていて、巨大なタンカーやら貨物船やら自動車運搬船などが山ほど通る。この航路は、さすがにのこのこ斜めに横断するわけにもいかないので、いったん神島という島まで行って、そこから最短コースを通る予定であった。なに、航路そのものの幅は大したことないので、本船の間をぬえば、すぐ横断できるのである。
そこで、まずは神島をめざした。太平洋高気圧はますます勢力をましている様子で、直射日光がじりじりと照りつけ、日焼け止めを突き通して肌に刺さった。たまらず首にタオルをかけたが、これはあとで写真を見るとずいぶん格好の悪いものだ。なにか、おしゃれな首周りの日よけを考えてくれないかなあ、と思いつつ北に向かって漕いでいった。視程はそれほどよくなく、GPSの針路だけをたよりに進んでいく。食べ物はすっかりない。
午後になって、ようやく神島にとっかかった。潮も追い潮にかわり、スピードもぐっと上がっていった。気になるのは、後ろをずっとサメがついてきていることで、ときおりかわうそ号の前にすーっと出て、こちらにガンを飛ばしていく。こけたら河童でも喰う気なんだろうが、そうはいかない。こっちは百戦錬磨の河童とかわうそである。自分の庭みたいな伊良湖水道で、お前なんぞに食われるかい、とにらみ返していたのだが…、神島の南側で、潮目が川のようになっていた。500メートルぐらいの間なのだが、波がトゲのようにささっている。しかし、流されていけばいいのだから楽勝じゃん、この風景をビデオに撮っていた。なにしろ、庭なのだ、庭。
さ〜て、潮目を越えると最後の問題、伊良湖水道である。航路のブイはしっかり入っているし、本来こんなところを手こぎで入ってはまずいのである。しかし、ここを通らないと帰れないわけで、本船の合間をぬって、ちょいと通しもらうつもりである。航路の西側のブイまで漕ぎ寄って、本船のタイミングを計った。ちょうど、伊勢湾側からLPGの巨大船が近づきつつあった。その後ろには、本船が数隻続いている。当然だが、LPGタンカーと、これらの本船の間は、かなり隙間がある。というか、危険物運搬船との間隔を取っているのだ。そこで、この隙間を通ることに決めた。なに、かわうそ号なんて本船からしたら、屁みたいなもんで、ぶつかったってLPGが爆発するようなこともないのだ。
LPGタンカーが真ん前に来たタイミングで、一気に漕ぎ出した。巨大船は、一見ゆっくりそうに見えるが、実はかなり速い。あっという間に前を通り過ぎて、かわうそ号の針路が空いた。それっと、実にひさびさの全力漕ぎである。10分ほど漕ぐと、向こう側のブイが見えてきた。あれを越せば航路から出てしまうので、どう漕ごうが勝手である。ところが、かわうそ号の背後から、なにやら不気味な音が聞こえて来るではないか。そう、あの音は、間違いなくヘリの音。しかも、海上保安庁で使っているベル212のローター音である。いかん、早く航路からでないと。現場を押さえられたらめんどうだ。LPGタンカーの先導船(伊勢湾の中では、危険物運搬船のでかいのには先導船がつくきまりになっている)が通報しやがったな〜と思いつつ、さらに必死に漕いだ。河童が航路ブイを真横に見ると共に、ヘリが頭の上を越えた。ヘリはいつものようにかわうそ号の上空を数回旋回し、東の方へ飛び去っていった。やれやれである。
伊良湖港直前で疲れたのであるが、伊良湖港には出発する前からサポートしてくれているsuisuiさんが、アクアミューズを出してお迎えに来てくれた。カメラを交換して、写真を撮ってもらった。自分が漕いでいる写真が、本当にない。貴重な写真を撮ってもらい、伊良湖港に入港した。いつものスロープに勝手にフネをあげたら、めちゃくちゃに腹が減っていることに気づいた。
非常にめずらしく、後ろから潮が来ている。 | |
と思ったら、この有様。 流れすぎだ。 |
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伊良湖水道横断直前。 本船のタイミングを計る。 |
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目の前を、LPGタンカーが横切る。 このフネの直後を通った。 |
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迎えに来てくれたsuisuiさん。 河童のサポートをしてはまり、 いまや日本一有名なサポーターとなった(?)。 |
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伊良湖に着いた河童。 ここから先は池だと思っている。 暑い。 何よりも腹が減った。 |