松ヶ崎のコンビニ

パソコン修理中の間のこと(7)    2004年1月27日

冬眠中

 河童は「癒し系」という言葉がきらいである。どうもあの言葉を聞くと虫酸が走る。「癒された〜」などと言っているやつも嫌いで、甘えるのもいいかげんにしろと、後ろからどついてやりたくなる。癒される必要があるほど何かしたのかと、正座させて問いつめたいのである。
 だいたい、癒されなきゃいけないということは、自分の限界を認めたということである。もうこれが限界なんで、へとへとです。休ませてください。というのが、癒されるという意味だろう。これを自分で認めるということは、私はここまでの者ですよ、と宣言するに等しい。俺だったら、こんなもんまだまだ、もっといけるぞ〜と思っていたいし、そうありたい。もし本当に限界でも、さらにそれを越える方法はないかと道を探るぐらいの意欲は持っていたい。
 まったく、癒し系だの癒され系だのとバカなことをいう前に、もっと努力と工夫をしろよ。

 やっと秋田県に入り、行くぞ〜と気合いを入れたところでたどり着いたのは本庄市の松ヶ崎という港だった。ここは本庄市と言っても、市街地から10数キロ離れたところで、港の周りはきれいに何もなかった。このあたりの地形というのは、海から30メートルぐらいせり上がったところに国道が通っていて、そのところどころに集落がある。この松ヶ崎も、衣川という川の河口に集落ができていて、そこに小さな港があるだけだ。テントをはったあと、国道まで登ってみたが、見える範囲には何もないので、もう一度フネに戻って自転車を組み立てた。漕いでくる途中に、国道沿いにコンビニらしき建物があったことを思いだして、ひとまず国道を南に行ってみることにした。途中、国道が二股に別れていて、海沿いの道が集落の中に延びていた。山側はバイパスのようで、大型が制限速度を大幅に超える勢いで走っている。通行量の多いバイパス側を避けて、集落に向かう道に進むと、ほどなく酒屋があった。日本中回っていて、一番不思議に思うのは、どんな過疎の集落にいっても、酒屋だけはほぼ必ずある。ない集落も一ヶ所だけ知っているが、どこにあるかは内緒である。河童はそこを「ドライビレッジ」と名付けた(笑)。酒屋を過ぎると、集落の中には食料品店やら郵便局やら新聞屋やら一通りの店があった。これで一安心である。さらに南に進み、集落を抜けきってバイパスと合流したところに、めざすコンビニがあった。早速、持ってきたゴミを捨てる。河童がなぜコンビニを一生懸命に探すのかといえば、それは一言、ゴミ捨てのためである。なにしろ2002年、あちこちに出した出発前の企画書によると、河童は「ゴミ捨て禁止」を訴えながら日本一周をめざすはずである。故に、ゴミをそこいらに捨てるとか、港で燃やしてしまうなどという行為は厳禁である。とはいえ、地方自治体のゴミ捨ては、当然であるが旅をするもののことなど考慮に入ってないので、旅人が規則通りにゴミを捨てることは不可能である。だいたい、厳しいところになると、規定のゴミ袋に名前まで書いて出さなくてはならない。となると、コンビニのゴミ箱に捨てるより方法がないのだ。そりゃ、できれば地元の商店などで買い物をして、あれこれとまた交流を図りたいところなのであるが、ゴミ問題が解決しない限り、これはなかなか難しい。
 ゴミを捨ててすっきりしたところで、アイスクリームを買って食べた。このコンビニは、海からせり上がったがけの上にあってまことに眺めがよろしい。海に面したさくの上に腰掛け、さっき通ってきた海を見ながら食べるアイスクリームは格別である。

 こうして無事コンビニも見つけ、秋田まで残り30キロというところまで来たのであるが、この後、ここで大事件が起こる。これまで数々の危機を乗り越えてきた河童なのであるが、よもやこんなところで生命さえ危ぶまれるような事態に陥ろうとは夢にも思わなかった。
 さて、河童を襲う大事件とは。次回の更新を待て!

この静かな港で、事件は起こった。