尻子玉を抜く(4)

2003年11月21日

冬眠中

 手術後の河童です。さすがに当日は痛くて、書くどころの騒ぎではなかった。麻酔が切れてから、どう表現したらいいのか、お尻に焼けた杭を入れられた(されたことはないけど)ような痛みが続き、どこまで鎮痛剤なしにいけるか耐久レースを一人でやっていたものの、夜の9時についにギブアップ。ナースコールで鎮痛剤をリクエストして飲んだ。なんのためにそんな我慢大会をやったのかは、自分でもなぞなのである。

 さて、手術当日は浣腸プレイで始まった。前日に下剤をもらったものの、何の変化もないまま翌朝を迎えてしまい、
「じゃあ、浣腸しましょう」
と明るく看護師に言われ、プレイが始まった。この病院には「浣腸室」というものがあって、下剤が効かない患者は、そこに連れて行かれ、浣腸されるのである。当然、河童もドナドナの子牛のようにそこへ運ばれた。ベットに横にされ、待っていたのだが、ふと気になって、何CC浣腸するのか聞いてみた。
看護師は、にっこり笑って、
「ふふふ、なんと驚きの120CC。これは効きますよ〜」(本当にこういった。)
そういって、固く閉まった河童の肛門に浣腸を差し込んだ。腸の中ににゅるにゅると冷たい感触が広がり、速くも激しい便意がおそってきた。看護師はたっぷり液を注入したあと、
「さあ、3分間我慢しましょう」
とにっこり笑った。しかし、便意はますます激しくなり、波のように襲いかかってきた。
「ああ、だめ〜」
「まだまだ。まだ出しちゃダメですよ〜」
「だめ、限界です」
「もうあと1分」
「お許しください〜」
「あと30秒」
「うっ…、もうだめぽ」
脂汗を額に浮かべ、必死にこらえる河童を、看護師は冷たくながめた。
「5,4,3,2,1…」

 で、浣腸も無事すみ、いよいよ手術室に運ばれるのである。てっきり、歩いていくものだと思っていたら、運ばれる直前に打たれた2本の筋肉注射が、レロレロになる薬だとかで、ベットごと移動することになった。たしかに、打たれた直後から頭がふらふらしだし、かなり酔っぱらったような状態になっていた。
 ベットごとエレベーターに乗せられ、3階の手術部に行くと、また確認が行われ、河童の身は手術部に引き継がれた。患者の取り違えがあると困るので、入院したときから名前と患者番号が入った腕輪をつけているのだが、それで再度確認が行われる。そして、いよいよ手術室入りである。とはいえ、手術用のベットに移された河童の目に入るのは天井ばかりで、手術部の様子などはまるでわからない。この病院の手術室は、全部で11室あると言うことだが、全体像はつかめないまま一室に運び込まれた。

 手術台に移されると、麻酔である。腰椎麻酔でやると言われていたのだが、こいつは脊椎に麻酔液を注ぎ込んで、神経の伝達を止めてしまうという技で(だと思った。間違っていたらしんのじさん、訂正お願いします)簡単に言うと背骨に薬を注射する。手術台に座らされて、背中を丸め、腰をつきだしたところに注射を打たれるのだが、痛い! 背骨の軟骨の中をぷすぷすと針が進む感触がして、その後冷たい液体がじわっと広がっていく。無意識に腰を引いたところを、すかさずナースが手を入れて押し返す。ようやく終わったと思ったら、なんと2本目が入ってきた。うう、こうなったら感触を味わってやる、と妙な好奇心が沸いてきて、背中の感触に神経をとがらせた。2本目の方が、じわじわ感が大きかったので、薬品も多かったと思う。そのまま座って、麻酔が効いてくるのを待った。始め5分待ちます、と言って、5分待っていたのだが、ドクターが確認するとまだ感覚がある。ついで7分まで待つということになって、そのまま手術室の時計をながめながら待っていると、お尻の感覚がなくなってきた。
「どう?」
と聞かれるのだが、触られている感触のみで、痛くはない。ドクターは思いっきりつまんでいるはずなのである。次に術位にかえられる。どういう体位で手術をするのかと疑問だったが、手術台にうつぶせにされると、手術台がウィンウィンと動いて、河童の意思とは関係ないままに術位になってしまった。どんな体位かというと、うつぶせで大の字になって、お尻をあげたような姿勢である。もうちょっとわかりやすく言うと、馬の形をした拘束具があるが、あれに縛りつけられて、少し前に傾いた感じである。それで、両足とお尻をベルトで固定される。もっとも、麻酔がかかっているので、しばられている感触もない。左側のガラスに反射する姿が見えるのだが、手術が始まる前に布を被されてしまった。

 さて、この先はやることもないし、ひたすら枕に頭をつけているだけである。しきりにお尻のあたりを押されている感覚はあるのだが、何をされているのかはさっぱりわからない。ドクターとナースの話を聞いているだけである。そのうち、一人のドクターが
「切るほどないぞ」
と言っているのだが聞こえた。ほどなく、主治医が頭の方に来て、
「内痔核ほとんどないんで、中切るのやめますね」
 結局、痔核はないということで、腸の中を切るのは止め。痔核と一緒に切除するよていだったskin tag (皮膚のたれ)のみ切ると言うことで、手術変更になった。たぶんレーザーメスでじゅわ〜とお尻のまわりが切られていたはずである。5分ほどして、主治医が切除した肉片を目の前に持ってきた。1センチ×3センチほどの肉が二つ、ケースの中に入っていた。1年半の間、河童を苦しめた肉片に、しっかりと呪いをかけてやった。
 しかし、おそろしいことにこの切り傷は、縫いもせずそのまま「放置」なのである。痔の場合、下手に縫うと化膿して術後経過がよくないので、開放状態で回復を待つ。よって、手術後のトイレは恐怖なのである…。

 こうして手術は終わったのであるが、今日になって麻酔の副作用で頭痛が出てきた。起きるととたんにだめになってくるので、これも寝ながら書いているのである。もともと体が固いので、仰向けに寝るのは苦手なのだ。しかし、この様子だと週明けに退院だぞ。行けないとあきらめたY-14クラブの総会に出られる可能性も出てきたわけで、また来週は動きがありそう。うう、次の報告を待つのだ〜。

こうして書いている。
起きるととたんにくらくらくる。